【インタビュー】文化財保存・復元の奥深さ

金久保 仁様

<編集部>本日はご多忙の中お時間をいただき、ありがとうございます。社寺建築に長年携わられているということで、エキスパートでいらっしゃる金久保様へ今回は建築に関することを中心にお伺いしたいと思います。宜しくお願いいたします。

<金久保様>宜しくお願いします。清水建設の社寺建築に対する取り組みは古く、私自身も社内において、特に文化財の関係では最も長く取り組ませていただいています。20 年以上は文化財の仕事に携わっていますが、エキスパートとかそのようなものではありませんが、これからも研鑽しながらこの仕事に取り組んでいくつもりです。

【文化財の修理が観光資源に】

<編集部>まず、長期間を要する文化財の保存修理工事を観光資源に活用している例がありますが、先日の出雲大社のご遷宮ではどのようなご対応をされたのでしょうか。

<金久保様>最近では文化財の現場を見せながらの工事は多いですね。有名なのは姫路城や富岡製糸場ですが、別途見学用の施設を設けるなど工夫されていますね。ただ、工事しているところを披露するには見学用の新たな施設を作る必要があるので、行政の後押しが必要です。実際、見学用の施設を設けているところは所在の自治体のバックアップ体制があります。出雲大社ではそのような常設のものは用意していませんでしたが、仮殿遷座後 5回の特別拝観が開催され、通算で 40 万人ぐらいの方々が拝観されました。それだけ関心度も高く観光資源としても評価されているということなのでしょう。

【出雲大社がつないだ不思議な木材のご縁】

<編集部>出雲大社のご遷宮の期間に東日本大震災が発生しましたが、少なからず遠く離れた出雲大社の修理工事にも影響を与えたと伺いました。

<金久保様>大社の御本殿では松材が多く使われていますが、太い松材を調達するのに東北地方へ頼っています。製材業者さんから 2011 年3月 8 日に来週納材するとの連絡を受けたあと、3月11日に東日本大震災が発生し,連絡が途絶えてしまいました。当時は交通網も電気も止まっている状態で、しかもご家族も震災で亡くされたということでした。そのような中でも自家発電で機械を動かすなど頑張っていただいて3月末に納材していただきました。その製材業者さんは、もともと海の近くに土場を持っていたそうなのですが、何年か前に山手のほうにも土場を持つようになったそうです。海のほうは津波の被害を受けましたが、山手のほうの半分は浸水せずに無事だったのです。今回の工事で納材が遅れるとご遷宮の日程が危ぶまれるという大変な状況でしたが、業者さんの松材が無事で、業者さんに必死で頑張っていただいて難を逃れました。出雲大社は縁結びの神様として有名ですが、このように特別なご縁もあるのだなと思いました。

【文化財建築の技術継承と後進の育成について】

<編集部>ところで、貴社の社寺との関係は江戸時代まで遡るのですね。金久保さんはその中で長年社寺を始めとする文化財建築に携わってこられ、まさに文化財建築のエキスパートと言えますが、ご自身の伝統技術の継承や後進の育成などについてご意見を伺えますか。

<金久保様>まず、清水建設についてですが、初代の清水喜助が1804 年に創業し、江戸城から浅草寺・寛永寺までの建築に携わっていますから、歴史的にも社寺を始めとする文化財建築との関係はかなり長いことになります。社寺建築専門の施工部門を大手ゼネコンで持っているのも弊社のみで、そのような創業の背景からすると専門性が高いのも頷 けるのではないかと思います。 次に伝統技術の継承と後進の育成についてです。出雲大社のご遷宮の例でいいますと、ご遷宮の期間は 60 年を目安にしており、当然その木造建築はかなり痛んでいるのですが、工事を始めてみると長期間持続させるような工夫が多く見受けられました。木造建築というのは面白くて、更新性が高く、破損や腐朽で傷んでいるところを直せば蘇りますし、先人たちの思いを感じながら自分の仕事に反映ができ、非常に勉強になります。 中世の職人には機械もないので、手作業で労力を惜しまずやっており、現代の職人と比較すると技術的に長けている可能性は高く、結果的には文化財を修理するということが 最も技術継承や後進育成に役立つということになります。現代では機械も使用し手順も異なっていますが、それでも文化財にビスやボルトは使用しないなど昔ながらの工法も倣って修理しています。伝統的に引き継ぐべきところは引き継いでいるということです。 さらに、後進の育成に欠かせないこととして、文化財や社寺建築に携わる人々の待遇がもう少し良くなる体制を築くことができないかと思っています。彼らは自らの仕事に誇りを持ってやっているが、報酬等の待遇が満足のいくものとはなっていません。従来の雇用制度ではなかなか人がついてこられず、雇用体制のレベルアップが必至です。貴重な伝統建築を自分たちで守っているんだという彼らの誇りだけで支えられているというのが現状です。

【社寺観光はこれからますます発展する】

<編集部>最後に、社寺観光連盟に期待することがございましたらお願いします。

<金久保様> 観光資源として社寺は国内外を問わず関心が高いのではないでしょうか。御朱印ガール、神社ガール、寺ガールとか新しい参拝者も増え、マナーも格段に良くなってきているように感じます。インバウンドで外国人観光客も増加し、受け入れ態勢もどんどん整備されつつあるので、観光客が満足できるような準備をしっかりしていけばどんどん良くなっていくのではないかと思います。

 

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