【連載コラム】神々のふるさと対馬巡礼の旅 vol.5

Ⅳ.天孫族と海人族の融合伝説に彩られた対馬
2.それでは、対馬の海人族とは一体、何者であったのか?

③地勢的条件から生まれた対馬の特殊性と海人族の出自
次に視点を変えて、対馬の地勢的条件から海人族との関係を見てみることにする。上古、人々は国境の壁が高い現代社会とは根本的に異なる自儘な移動を繰り返している。特に、海洋が身近にある大陸沿岸部、半島、島嶼部の人々は海流や潮流を利用する方が陸路を使うよりも距離、速度、運送量の点において格段に優れていることを日常の生活の中で知悉していたし、それを熟す航海術にも習熟していた。
対馬は朝鮮海峡を挟み半島からわずかに50km、九州本土からは132kmの海中にある。そのため、朝鮮半島の海人が漁の獲物を求め日常的に行き来し、いつしか定住する者もあらわれたことは容易に推測できる。また逆に、筑紫や出雲、丹後半島などから半島や大陸への渡航の途上に停泊地として利用する者のなかで定住を決めた者も少なからずいたことも容易に想像がつく。

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